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アラブ・エクスプレス展@森美術館

久しぶりに、アンテナが立った。
「アラブ・エクスプレス展」に行かなくては!
というわけで、行ってきた。

アラブと言えば、何を連想する?
私は…イスラム教、砂漠、石油、モスク、ピラミッド、黒い布を纏った女性、それから、テロと戦争。
恥ずかしながら、ステレオタイプ。

それから、アラブの伝統的芸術については憧れでもある。
偶像崇拝を禁止するイスラム教の中で独自に発展してきた幾何学敵な装飾が好きで、ステンドグラスではモザイクシリーズを作った。
実際には距離も言葉も遠すぎて、現地に行くことは叶っていないけれど、未だに憧れているし、機会があれば逃さないつもりだ。

さて、まず、全体を通して驚いたことは、女性作家の多さ。
この展示の男女比は、ほぼ半々だったのではないかしら。
アラブの女性といえば、「抑圧されていて自由が少ない」という先入観を持っているけれど、こと芸術方面に関しては対等の力を持っている様だ。
むしろ、刺激的な作品はほとんどが女性による作品であったから、
抑圧されているからこそ、理不尽な慣習について考える機会が(男よりも)多いだろうし、男たちに囲われた中から全体を冷静に賢く見ているのだな、と感じた。

たとえばこの作品。 Gladiator/Madonna/dances with Wolves (Meera Huraiz/ミーラ・フレイズ)
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普段アラブの女性の顔を隠している黒い布を、装飾的な仮面に置き換えている。
題名はそれぞれアイドルや映画のタイトル。
顔を覆うことをファッションの一部として楽しんでいる様に感じられ、彼女にとってブルカは必ずしも嫌悪の対象ではないのだと気づかされる。
(この辺、女性ならば誰しも感じることではないかしら。自分の容姿を見せずに外に出て用を済ます事が出来たなら、どんなに気楽か!)

それから、これも女性の作品。 Black Fountain(Maha Mustafa/マハ・ムスタファ)
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その名の通り、黒い巨大な噴水。
皿状の土台は、布のような柔らかい素材でできていて、噴水の勢いで絶えずブルブルと振動している。
不気味で、まるで一つの生き物の様。見る人を不安にさせる。
アラブの人が、石油にマイナスのイメージを持っているなんて思ってもみなかったことで、また自分の先入観に気づく。
解説によると、黒い水は「石油」ともう一つ「黒い雨」の象徴でもあるとのこと。
日本人なら、第二次大戦時に広島・長崎で降った事を知っている黒い雨だが、
湾岸戦争時、クウェートの油田地帯が爆破されたときにも、黒い雨が降ったそうだ。
作者はこの黒い雨を実際に浴びており、その強烈な体験からこの作品を生み出した。
油田はアラブに莫大な富をもたらすと同時に、絶えない争いや環境破壊をももたらす諸刃の剣であると訴えている。

これもアラブ批判。(これも女性作家による作品!)
Dubai:What's Left of Her Land?(Reem Al Ghaith/リーム・アル・ガイス)
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とても繊細な作品。近寄ってじっくり見ると、あちこちにメッセージが隠されている、楽しい作品です。
建設ラッシュに沸くドバイを、じっと空から見守っている鳥が象徴的。
実際に建設に従事しているのは貧しい労働者階級であることを問題視する作品もあり、アラブの人は急速に変化する自国の現状を冷静に見て問題提起している。

次は、イラストとアニメーションを組み合わせたユニークな手法の作品。
The House that My Father Built,(once upon a time)
(Sadik Kwaish Alfraji/サディーク・クワイシュ・アル・フラージー)
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祖国の家での記憶がとめどなく思い出され、もはや戻れない故郷の我が家への思いがあふれている。
アニメーションの手法がうまく、戦後の日本でのうのうと暮らしてきた私も、思わず郷愁の念に飲み込まれそうになる。

それからこれ。The New(er) Middle East(Oraib Toukan/オライブ・トゥーカーン)
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アラブ地方の白地図のパズルが、壁に磁石でくっつけられている。
見る人はパズルを自由に動かし、誰でもより良い中東世界を作ってみることができるのだが、
ただ一つ制約が。
「パレスチナは動かせません」
そのパレスチナの小さいこと!
取り合いとなっている土地がいかに小さいのか、体感した。
更に、お手本として書いてあるのは、米軍が考えた「より良い中東」の図。
パズルのように、ゲーム感覚で国境を引く事をも象徴しているようだ。

だいぶ長くなっているけど、あともう一個だけ!
I'm sorry (Adel Abidin/アーデル・アービディン)
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「I'm sorry」がピカピカとしているこの作品。
イラクで生まれた作者が、イラク戦争後にアメリカを訪れた時、彼の故郷を知ったアメリカ人は口々に「I'm sorry」と声をかけたそう。
この言葉の意味は「お気の毒さま」なのか、はたまた「ごめんなさい」なのか、どちらにしろアメリカ人ってこういうあっけらかんとしたところあるよねーと思ってしまった。

近年、アラブの春だったり、ロンドン・オリンピックの柔道で、髪の毛を黒い布で隠したサウジアラビアの女性選手が出場したり、アラブ方面が目まぐるしく変化しているようだな、と、なんとなく、感じていた。
今までが、情報不足だったのだろうな。
私も、「日本と言えば、ゲイシャ、ハラキリ」っていう外国人とか、
ハリウッド映画で着物の着付けが信じられないくらいヒドイこととかに憤慨したりするけれど、
アラブの人たちも、こんなステレオタイプの「アラブ」には嫌気がさしているだろうな。

彼らがアラブで力強く発信していて、私が日本でちゃんと受信して、断片ではあるけれど彼らの考えていることや人間らしさをダイレクトに感じることができた。
これも、アートの持つ力ですなー。
内容が濃いし、どれも面白い作品ばかり。
気がつけば2時間以上、みっっっちり集中していて、疲れてしまった。
久しぶりだなー、この充実感。

あ、最後まで読んでくださった貴方に耳より情報。
なんかね、太っ腹なんですよ、この展示。
①音声ガイドが無料!
②作品の一部を持ち帰っていい!
 (前述の「I'm sorry」では、星条旗の三色で可愛いI'm sorry candyを。その他に作品の絵ハガキを貰える展示もある。)
森美術館のアラブ・エクスプレス展は10月28日まで!
# by aroma_of_spring | 2012-08-16 09:08 | art

橙色のランプ。

今年の始めに注文頂いていたランプを、ようやくお渡しすることができた。
橙色のランプ。_d0200561_193126100.jpg

私にしては、クラシカルなデザイン。
イメージは…イギリスの洋館の夕暮れ、かな。。。
今回は、
「オレンジやベージュの暖かい色」
「幾何学的なデザイン」
という、2つのイメージを頂いて、あとは自由に制作。
こういった、自由度の高い、抽象的な注文を頂くと、自発的には決して出てこないであろうデザインが出てくるのが楽しい。

その反面、出来上がった実物を見てもらうまで、気に入ってもらえるかわからないから、不安が募る。
写真でラフ画やガラスの報告をするけれど、やっぱり、実物を見ないと分からない。
店頭に並べた作品を見て頂いて、これください、はいどうぞ、というやり取りとはまた違うドキドキ感なのだ。
気に入っていただけたようで、一安心。
玄関に置いていただけるそうです。
今夜はぐっすり眠れそう。
橙色のランプ。_d0200561_19322628.jpg

# by aroma_of_spring | 2012-08-15 19:07 | stained glass

最近の作品たち。

ステンドグラスのヴィトリエ・アジュール

デザイン・フェスタから、はや一ヶ月が経った。
あっという間!
作品ができても、撮影が面倒で放っておかれているのも幾つか…(可哀想に。。。)。

ランプは暗くならないと撮影できないし、最近はなかなか夜にならないから。。
なんて百パー言い訳です。はい。

やうやくいくつか、撮影したのでご紹介。
まずは男性たちに人気のあった、青いモザイクのその後。
なんと、吊り下げタイプに仕上がっております。
最近の作品たち。_d0200561_1101594.jpg

うむ。
タッセルがお似合いです。

それから、海の新作。
最近の作品たち。_d0200561_1132137.jpg

また可愛らしく出来上がったね。
上面がキラキラ~。
各面はこんな感じ。
最近の作品たち。_d0200561_1151510.jpg

写真のペンギンは赤く見えるけど、実際にはもっと紫色。
魚の目が自慢です。

あと一息で、色々出来上がる予定。
複数を同時進行しているので、なかなか完成が遠いです。
# by aroma_of_spring | 2012-06-23 01:22

新型の奴。

流行りの新型絆創膏。
(て、言っても発売から5年くらいは経つか。)
傷から出る体液をゲルにして留めるから治りが早くなるという謳い文句の、
フニフニで半透明な素材の、
貼ったら3日くらい剥がさないでおく、
高価な奴の話。

今日、ガラスに引っ掻けて、手の甲の皮が少し剥けてしまった。
傷口が広いからか、サクッと切れた傷よりもヒリヒリ痛くて血もかなり出る。
いつも通りの従来型を貼ったのだけど、傷から浮いて、ガーゼが当たって痛いし、水仕事で絆創膏がふやけてしまうと不快になる。
だから、新型を貼ってみた。

新型はフニフニ素材が傷口に密着してくれるので擦れないし、
防水フィルムでカバーされているから、水に濡れてもふやけない。
うーん、快適。

しばらくは幸せに傷のこと忘れていた。

だけど。
お風呂入った今、取れそうだ。。。
防水は完璧だったのだが、防水フィルムの端がめくれそう。

そういえば、今までも「ここぞ!」て時に新型を貼ってきたけれど、2日と持ったこと無いぞ。
普通3日も持つの?
私は規格外にガサツってこと?

今回こそ、規格内に挑戦。
なんとか持たせたい。
新型は、傷ができたときに分泌される体液を傷口に留めることで治りを早くするので、
次の日に貼り直したら意味がないのだよ。

つまり無駄にしたくない貧乏性なんだけど。

ということで、ニチバンのホワイトテープで上から補強。
新型と旧型のコラボレーション。

物事って、一長一短だわー。
# by aroma_of_spring | 2012-06-12 23:48 | something

秩父② 秩父神社・今宮神社

秩父散歩レポート其の弐は、羊山公園~秩父神社~今宮神社。
(秩父其の壱 日向山編はコチラ)
日向山から降りて、さて、どうしよう。
時刻はまだ2時。

当初は武甲温泉なる温泉に行こうと思っていたのだけど、気分のままに歩いているうちに、迷子に。。。
花がたくさん咲いていて、寄り道しまくってたのだ。笑。
秩父② 秩父神社・今宮神社_d0200561_21441393.jpg

 ↑ 一面のシロツメクサ。バックの山は、もうお馴染みですね、の武甲山。

大丈夫、町中どこからでも武甲山が見えているから、道を外れても方向感覚は失わない。
無事、横瀬駅に到着。

温泉に向かいなおすにはちょと疲れていたので、芝桜のじゅうたんで有名な羊山公園へ!
芝桜にはもう遅いけれど、大きな公園だ。
行ってみよう。
これまた、国道から小高い丘になっていて、急な坂&階段を登ると、
秩父② 秩父神社・今宮神社_d0200561_21333236.jpg

一面のお花畑。眼下には湖。
さわやか~な風の通る公園だ。

**************

羊山公園を抜けて、隣の駅西部秩父に向かいがてら、秩父神社にも行こう!
秩父神社は平安時代からある由緒正しいお寺で、秩父地方の総社。
12月の秩父夜祭りは盛大で、京都の祇園祭と並んで日本三大美祭に数えられるそう。
秩父宮様も合祀されていて、境内には錚々たる皇族の方々が御手植えになった木々があちらこちらに。

現在の境内は、江戸時代に徳川家康が寄進したもので、
日光東照宮の三猿や眠り猫で有名な彫師、左甚五郎による彫刻が残されている。
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 ↑ これ、本社ね。この屋根下の部分に左甚五郎の彫刻が。
四角い社殿の四面にそれぞれ「子育ての虎」「北辰の梟」「つなぎの龍」そして・・
 ↓ 「お元気三猿」
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三猿、といえば日光の「見ざる、聞かざる、言わざる」だけれど、その逆を行っている!!
良く見て、良く聞き、良く話すことが元気の秘訣だとか。
右の「見る」猿なんて、目を見開きすぎでしょ。顔が怖い(笑)

驚くのは、この社殿は左甚五郎作で徳川家康寄進の社殿だけれども、
同じく徳川家康寄進の左甚五郎の手による社殿である日光東照宮よりも先に作られているということ。
つまり、こっちが元祖で、日光東照宮は秩父神社の社殿を参考にしたとか。
ほかの三面の彫刻も、ちょっとユーモアのある彫刻だから、楽しんで作ったのかもねー。
プロトタイプはお茶目に、大規模な日光東照宮は真面目に・・。笑。
秩父神社は、とても明るい雰囲気のある神社だった。

***************

あー楽しかった!と秩父神社を後にして、国道を西部秩父駅へとむかっているところ、
少しこんもりした木々のある場所が見える・・。
もうゆうがただから、駅に急ぎたくて一度は通り過ぎたのだけど、なんだか気になる。
結局引き返して横道に入ってみると、今宮神社というお社。
秩父② 秩父神社・今宮神社_d0200561_23301321.jpg

 ↑ ご神木は樹齢1000年のケヤキ。
小さなお社なのだけど、まつられているのは錚々たるメンバー。
イザナギ・イザナミ、スサノオ、役小角そして、八大竜王!
そんな高い神格のメンバーがこんなに小さな神社に、、どうしてッ?!?

特に驚いたのはね、八大竜王が一気にまつられているということ。
一口に龍といっても、彼らのには階層があるの。
キリスト教の言う天使たちにも階級や仕事が割り振られているように、龍にも階級と役割分担があるの。
龍はその役割によって八つの部族にわかれていて、そのトップである竜王八匹(?)はそれぞれ菩薩や諸天(神々のこと。帝釈天や梵天など、天界でもトップの神)と等しい神格なのだよ。
それが八匹まとめて祀ってある神社なんて、見たことないす!!

 ↓ ご神木アップ。龍神が祀られている場所には、必ず洞がある。龍の寝床。
秩父② 秩父神社・今宮神社_d0200561_23363580.jpg


あ、ごめん、ついてきてる?笑。
民俗学的な知識大好きなんです。
偶然引き寄せられた(としか思えない)今宮神社がこの日一番の大興奮だった。

なんだか詳しいことはわからないのだけど、神社には必ず由来があって、勝手にお柱を立てることはできないはず。
全国津々浦々、ばらばらに見える神社も、いまは神社本庁というところが仕切っていて、由緒ある神社の宮司などは彼らが采配しているし。
イザナギ・イザナミ、スサノオ←これだけでも滅多に見ない。
役小角は神道と仏教の融合を理想とした行者だから、それを体現している龍はかれの理想だったというつながりがあるけれど、
それにしても八大龍王を祀っているからには、なにか理由があるはず!
風水的に最高とか?
確かに山(武甲山)と川(横瀬川)があって、ヒノキの洞もあるけれども。

そしたらね、来週木曜6月14日のNHKBSで、「秩父神社・今宮神社」の特集がある模様。
タイムリーすぎる。
見ようーっと。
# by aroma_of_spring | 2012-06-11 00:03 | trip